ミスiD2020 ファイナリスト

No.73
かごめカゴメ
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所属
Office Peer Gynt
審査員のコメント
小林司
最初、男女のお笑いコンビ「カフカと知恵の輪」の「知恵の輪かごめ」として出てきた女の子。
セミ期間の最後あたりでとある出来事が重なり、その後すぐその関係を解消するんですが、その辺りのゴタゴタは興味ある人はググってください。
一見、お笑いなんて無縁そうな清楚で賢そうなルックスの彼女のお笑いのテーマが「可愛いで救いきれない世界を私の面白いで救いたい」。
元はと言えば去年の最初は京都のふつうの大学生で、それが突如お笑いをすることになり人前に出ることになり、十分誰が見ても可愛いんだけど、それは自分も言ってる「横顔がぎりぎり見てられる程度の容姿」で、人前に出ることでさらに余計に容姿について考えざるを得ない人生に踏み出し、その勢いでミスiDという面倒くさいオーディションに出た(そのチョイスは僕は正しいと思います)。
最終面接は、カゴメカゴメ♪のお囃子で出てきて、新作落語を一から作って披露してくれた。いわゆる若干実話のメンヘラ落語でオチはちょっと怪談じみてて、いい出来でした(今となって思えば怪談だから浴衣だったのかな)。いつも言うけど、僕は毎晩落語聴きながら寝る生活を二十年してる落語ファンなのでそれだけでも嬉しい。
コンプレックスだった容姿も、あえて唯一自信がある横顔のみの自撮りだけを出していったり、それを逆手にとってのラジオ配信をネガティブではなくポジティブに打ち出したり(大喜利時々見てたけどおもしろかった)、今は希望で削除してしまったのですが最終面接での写真は横顔じゃない写真もとてもきれいで、精神的にも肉体的にも、いろんな意味で、ミスiD期間でちゃんと目に見えて遠くまで成長した人の一人だと思います。だからちゃんとファイナルまで来たわけで。
ただ、ギリギリのところで受賞を逃したのは、彼女の賢さゆえの迷いみたいなものが全面に出てしまって見えてたことで、選考委員が、カメラテストから見てきた彼女の繊細で複雑なストーリーのこの先の続きをちゃんと想像できなかったからなのかな、と思います。
彼女の賢明さは、もちろん自分の容姿で人を笑わせるような古典的で封建的な笑いに向かうのではなく、ちゃんとネタで笑わせる笑いを志向し、しかも「可愛さ」というものへの二重三重のねじれが原動力になってる。その加減はとても難しく、シンプルに爆発力を伴いにくいという弱点はある気がします。歌とギターでそれを伝えるよりも、お笑いでそれを伝えるほうが正直何百倍も難しいと思う。
何かそれをうまく伝えるブレイクスルーするようなネタが見つかればそれもどんと突き抜けるはずで、落語は上手いし悪くないのだけど、そのスタイル自体があくまで芸重視になってしまうので、彼女の場合は真面目さだけが増幅されてしまう。もっととんでもないふざけたりキャッチーなものでもいいのかも…などということを最終面接見ながら考えてしまって、隘路に入ったまま選考会議に入り、たぶん僕も含めた全員の迷いが受賞を逃してしまったんだと思います。
なので、別に何も落ち込むことはなく、あの時点でちょうど分岐点にいたんだな、と思うだけでいい、と思います。
彼女にはとにかくいいところも武器も高いレベルでいくつもあるわけで。
でも、実は僕が見てて一番好きだったのは、彼女の同性、ミスiDの子たちへの優しい目線でした。僕が知ってる限りでもいろいろな意味でミスiD同期の子を何人も助けてた(助けたり助けられたりもしてたのかしれない)。何気なくやってるそういうガールフレンドシップみたいなとこが多分彼女の最大の良さで、今を生きてる女の子の生きづらさへの共感力がかなり高いんだと思う。それって最高じゃないですか。
つまりそういうことを想像するに、これだけ可愛いのにこれだけどうしようもなく容姿へのコンプレックスが消えないのなら(横顔以外を拒否したり顔をシャットアウトして配信したり)、そこを回避するパワーを他のベクトルに向けたほうがいい。女の子であることのたいへんさ、生きづらさ、と言うか死にたさ。でも楽しさ。みたいなことをテーマに、誰か同性と一緒に何かをお笑いベースで立ち上げたり、仕掛けて行ったりしたらとてもワクワクするものになるのではと。
落語とは正反対だけど、アメリカで言えばティナ・フェイみたいな(長くなりすぎるのでググってください)。
表に回ったり裏に回ったりしながらコメディベースで女の子イズムを挑発的に仕掛けていくような才能集団。絶対おもしろいと思うのですが。